○予防接種に関する基本的な計画の施行について
(平成26年3月28日)
(健発0328第1号)
(各都道府県知事あて厚生労働省健康局長通知)
(公印省略)
予防接種に関する基本的な計画(平成26年厚生労働省告示第121号)が平成26年3月28日に公布され、平成26年4月1日から施行されるところである。今回の改正等の概要は、下記のとおりであるので、内容を十分御了知の上、関係機関等への周知を図るとともに、その実施に遺憾なきを期されたい。
1 改正の概要
昭和23年の予防接種法の制定以来、60年以上が経過したが、この間、予防接種は感染症の発生及びまん延の予防等に著しい効果を上げ、人類に多大な貢献を果たしてきた一方、平成の時代に入り、予防接種禍集団訴訟に対する被害救済の司法判断が相次いで示されたことを受けて、平成6年に予防接種法が改正され、定期の予防接種が努力義務とされるとともに、法の目的に健康被害の救済に関する内容が追加される等、有効かつ安全な予防接種の実施のための措置が講じられることとなったこと。しかし、同時期に麻しん・おたふくかぜ・風しん混合(MMR)ワクチンによる健康被害が社会的に大きな問題となり、国民の懸念は解消されなかった。その後約20年にわたり、国内のワクチンの開発が停滞し、定期の予防接種の対象疾病の追加がほとんど行われず、「ワクチン・ギャップ」が生じてきたこと。
本計画は、このような予防接種行政の歴史を十分に踏まえつつ、予防接種に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画として、今後の予防接種に関する中長期的なビジョンを示すものであること。
(1) 予防接種に関する施策の総合的かつ計画的な推進に関する基本的な方向国民の予防接種及びワクチンに関する理解と認識を前提に、我が国の予防接種施策の基本的な理念は「予防接種・ワクチンで防げる疾病は予防すること」とすること。
また、予防接種施策の推進に当たっては、ワクチンの有効性、安全性及び費用対効果に関するデータ等の科学的知見に基づき、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(以下「分科会等」という。)等の意見を聴いた上で、予防接種施策に関する評価・検討を行うこと。
(2) 国、地方公共団体その他関係者の予防接種に関する役割分担に関する事項
@ 国の役割
分科会等の意見を聴いた上で定期の予防接種の対象疾病等の具体的な施策を決定すること。
また、予防接種法第23条に規定する責務や、海外からの情報収集等都道府県及び市町村(特別区を含む。以下同じ。)での対応が難しいものを実施すること。加えて、市町村が定期の予防接種に関する一連の事務を円滑に実施できるよう、関係者との調整や必要な財源の捻出及び確保等に努める必要があること。
A 都道府県の役割
医師会等の関係団体との連携、管内の市町村間の広域的な連携の支援及び国との連絡調整、保健所や地方衛生研究所の機能の強化等に取り組む必要があること。
B 市町村の役割
医師会等の関係団体との連携の下に、適正かつ効率的な予防接種の実施、健康被害の救済、住民への情報提供等を行うこと。また、副反応報告制度の円滑な運用及び感染症発生動向調査への協力、広域的な連携強化等に取り組む必要があること。
C 医療関係者の役割
適正かつ効率的な予防接種の実施及び医学的管理、入念な予診、接種事故の防止、被接種者及びその保護者へのワクチンの有効性及び安全性等に関する情報提供、副反応報告制度の円滑な運用及び感染症発生動向調査の実施への協力やワクチンの最新知見の習得等に努める必要があること。
D ワクチンの製造販売業者及び卸売販売業者の役割
製造販売業者は、安全かつ有効なワクチンの研究開発を行うほか、卸売販売業者とともにワクチンの安定的な供給並びに副反応情報の収集及び報告等を行うこと。
E 被接種者及びその保護者の役割
被接種者及びその保護者は、予防接種の効果とリスクの双方に関する正しい知識を持った上で自らの意思で接種することについて、十分に認識し理解する必要があること。
F その他関係者の役割
報道機関、教育関係者、各関係学会等は、国民が予防接種の効果及び副反応のリスク等の情報について正しい知識を得られるよう普及啓発に努めることが期待されること。
(3) 予防接種に関する施策の総合的かつ計画的な推進に係る目標に関する事項
国は、予防接種に関わる多くの関係者と共通認識を持った上で、科学的根拠に基づいて目標を設定するとともに、国民や関係者に対し、その目標や達成状況について周知すること。また、少なくとも5年ごとに本計画に再検討を加え、その結果や、分科会等による1年ごとの定期的な検証の結果、必要な場合は適宜予防接種基本計画を見直すこと。
当面の目標として掲げる事項は以下のとおり。
@ ワクチン・ギャップの解消
水痘、おたふくかぜ、B型肝炎、成人の肺炎球菌感染症の四疾病や、ロタウイルス感染症について、関係者や国民の理解を前提に、必要な措置を講じる必要があること。さらに、新規のワクチンについても、薬事法上の手続きを経て製造販売承認が行われた際には、分科会等の意見を聴いた上で検討し、必要な措置を講じるよう努めること。
A 接種率の向上
国や市町村等の関係者は接種率の向上のための取組を進めるとともに、国は、接種率の統一的な算出方法やワクチンごとの目標について、引き続き検討すること。
B 新たなワクチンの開発
国は、国民の健康保持等の観点から、感染症対策に必要な新たなワクチンの研究開発の推進を図ること。また、国内のワクチン生産基盤を確保するとともに、新たなワクチンを世界に先駆けて開発するよう努めること。
C 普及啓発の推進及び広報活動の充実
国は、被接種者及びその保護者等に対し、感染症に関する情報、予防接種の効果、ワクチンの有効性及び安全性、副反応のリスク及び副反応を防止するための注意事項について、普及啓発の推進を図ること。
(4) 予防接種の適正な実施に関する施策を推進するための基本的事項
@ 予防接種に要する費用
国、地方公共団体、その他関係者が連携して予防接種に要する費用等について検討し、その結果を国民や関係者に情報提供するとともに、可能な限り少ない費用で望ましい効果が得られるよう、ワクチン価格の低廉化等に向けて努力することが必要であること。
A 健康被害救済制度
引き続き客観的かつ中立的な審査を行い、国民に分かりやすい形で情報提供に取り組むとともに、制度の周知及び広報の充実に取り組む必要があること。
B 予防接種記録の整備
市町村における予防接種記録の整備のため、国は、予防接種台帳のデータ管理の普及等について、個人情報保護の観点や社会保障・税番号制度の導入に向けた状況も踏まえ、検討を進める必要があること。また、個人が接種歴を把握できるよう、母子健康手帳を引き続き活用するとともに、インターネット上でも確認が可能となるよう必要な準備を行うこと。
(5) 予防接種の研究開発の推進及びワクチンの供給の確保に関する施策を推進するための基本的事項
国は、「予防接種・ワクチンで防げる疾病は予防すること」という基本的な理念の下、国内外の感染症対策に必要なワクチンを世界に先駆けて開発することを目指すこと。
@ 開発優先度の高いワクチン
医療ニーズや疾病負荷等を踏まえ、麻しん・風しん混合(MR)ワクチンを含む混合ワクチン、百日せき・ジフテリア・破傷風・不活化ポリオ混合(DPT―IPV)ワクチンを含む混合ワクチン、経鼻投与ワクチン等の改良されたインフルエンザワクチン、ノロウイルスワクチン、RSウイルスワクチン及び帯状疱疹ワクチンを開発優先度が高いワクチンとすること。
A 研究開発を促進するための関係者による環境作り
ワクチンの研究開発には幅広い知見が必要であるため、関係者間の連携が図られることが重要であること。また、国立感染症研究所や独立行政法人医薬基盤研究所において、研究開発を促進するための取組が継続されることが期待されること。国は、ワクチンの受給の見通しについてのワクチン製造販売業者への情報提供、ワクチン製造販売業者が研究開発に着手する際の判断に資する感染症対策の目標設定、地方公共団体や医療機関及び国立感染症研究所等との連携強化による感染症の疫学情報の整備、予防接種の主な対象者である小児についての治験を実施する環境の整備、新たなワクチンを開発するための基礎研究に対する支援や企業の臨床開発研究への橋渡し及び産学官の共同研究の推進によるワクチンの円滑な実用化について、引き続き検討する必要があること。
B ワクチンの生産体制及び流通体制
ワクチンの生産体制については、パンデミック発生時に世界的に供給が不足するおそれがあるワクチンについては危機管理の観点から国内で製造できる生産体制を確保すること。その他のワクチンについては費用対効果の観点から基本的には国内外問わずより良いワクチンがより低価格で供給されることが望ましく、また、安定供給及び価格競争の観点から同種のワクチンが複数のワクチン製造販売業者により供給されることが望ましいこと。
ワクチンの流通体制については、一般的に製造販売業者から販売業者及び卸売販売業者を介して、あるいは市町村による卸売販売業者からの一括購入により医療機関へ納入されているが、新型インフルエンザの発生時等の緊急時には、需給状況を把握した上で適切な需給調整を行うことが求められるため、国、都道府県及び市町村は、行政の関与を前提とした流通体制を整備すること。また、一時的にワクチンの需給が逼迫した場合は、例えば、国がワクチンの生産に関する調整や、ワクチンが偏在しないよう取り組むこと等を通じ、ワクチンの安定供給に努めること。
(6) 予防接種の有効性及び安全性の向上に関する施策を推進するための基本的事項
国は、科学的根拠に基づくデータを可能な限り収集し、予防接種の有効性及び安全性の向上を図ること。
@ 副反応報告制度
定期の予防接種の副反応報告について定着・浸透に向けた一層の取組を行うとともに、制度の着実な実施を図ること。また、独立行政法人医薬品医療機器総合機構における副反応報告の迅速な調査及び整理を支援するとともに、副反応報告制度の精度向上や効率化に資する集計及び報告方法についての検討を進める必要があること。
A 科学的データの収集及び解析
ワクチンの評価や検討を行う場合、科学的データを随時評価することが重要であるため、接種率を把握するためのデータベースの整理や国が保有するレセプトデータ等の活用を図るよう努めること。また、感染症流行予測調査等により、ワクチン導入後の当該ワクチンの有効性及び安全性の評価等に努める必要があり、こうした取組の推進のため、関係機関の連携体制の強化に努める必要があること。
B 予防接種関係者の資質向上
医療従事者は、被接種者やその保護者に対して予防接種の効果や副反応に関する丁寧な説明を行うこと、特に接種医は基礎疾患を有する者等に対する慎重な予診を行うことが重要であること。
また、近年、ワクチンの種類や回数が増加していることに伴い、接種スケジュール等が複雑化しており、接種事故への懸念やワクチンの最新知見を得る必要性が高まっていることを踏まえ、厚生労働省は文部科学省や地方自治体等と連携し、医療従事者を対象とした予防接種に関する継続的な教育、研修の充実を図ること。
(7) 予防接種に関する国際的な連携に関する事項
国は、国際機関や海外の予防接種に関する情報を有する国内機関との連携を強化し、情報収集及び情報交換を積極的に行うとともに、諸外国における予防接種制度の動向等を把握する取組の強化を図る必要があること。また、我が国の国際化の進展に伴い、海外に渡航する者や帰国する者等への情報提供や海外で予防接種を受けた者の取扱いの検討、在日外国人への対応、海外渡航者のための環境整備について、対応や検討を行う必要があること。
(8) その他予防接種に関する施策の総合的かつ計画的な推進に関する重要事項
より効果的かつ効率的な予防接種を推進するため、同時接種、接種間隔、接種時期、接種部位に関して、国が一定の方向性を示すため、学会等の関係機関と意見交換するとともに分科会等で検討する必要があること。また、厚生労働省や都道府県及び市町村の衛生部局等は、予防接種施策の推進に当たり、医療関係者や衛生部局以外の関係部局、具体的には都道府県労働局、文部科学省、都道府県・市町村教育委員会等の文教部局等との連携を図ること。
2 施行期日
平成26年4月1日